2016年1月11日月曜日

『クマにあったらどうするか』語り・姉崎等


『クマにあったらどうするか』
語り・姉崎等
聞き書き・片山龍峯
ちくま文庫


「本が読みたい。数冊見繕ってほしい。」

漠然としすぎな要望に父は頭を捻らせ、楽しんで選んでくれたようだ。

封を開けた途端、感嘆の声を上げてしまった。
今すぐ読んでみたい本しかない。
それもそのはず、か。
ぼくは知的好奇心のかたまりを見て育ったのだから。

人付き合いは母に教わった。芸事は、感性は、多分父。

子育ては恐ろしい。ぼくは、親の戦略通りに育った気でいるから。

昔からなにかと言えば本を読みなさいと父は言った。
いつか手渡され、机のマット下に滑り込ませた新聞の切り抜き。

「活字の海を泳ぎなさい。一度きりの人生では、自分だけでは到底味わい尽くせないありとあらゆる世界を疑似体験できるのだから」
ああ、それは誰が書いた記事だったのだろうか。挿し絵と共にずっと頭のすみにこびりついているのだが、書き手のことは全く記憶にない。

本を読みなさい。
その教えは口だけでなく、欲しいものがあれば本ならいくらでも与えてくれたし、興味がありそうな本や著者に限らずワクワクする情報をいつもそれとなく提供された。

そのうちの一冊。

なんだと思ったら、「アイヌ民族最後の狩人」姉崎等さん、千歳の方ではありませんか。

千歳市内から支笏湖に向かう道の左手に「姉崎商店」ってのがあるけれど、そゆこと?

読み終わったら会いに行こうと思いながら、最後の最後まで読むのに間が空いてしまって、ようやっと。
インタビュー形式だから、なかなか読み進められなかった。

「アイヌモシッタ ヤクサクペ シネプカイサム」
和訳すると、
「この世に無駄なものは一つもない」

なんて素敵な言葉だろう。
どんな発音をするのかな。

やはり、ぼくらはみな、素晴らしいのだ。
君もぼくも、無駄じゃないのだ。


最後の最後のあとがきにて、
姉崎さんは2013年10月に亡くなったと書かれていた。

本の処分にお困りの方は売りに出す前にこちらまで。


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