2013年2月28日木曜日

香川農30〜最後はやっぱり観音寺

朝の会で話を振られたので感謝の挨拶。

「‥しんどいときには、レタスを見てみんなの顔を思い出します。そうしたら頑張れる気がします。‥」

まあそんなニュアンスのことを言ったら、待ってましたとばかりに、コテコテの大阪やんちゃガールが、
「そうそう、みんなの顔を思い出してもらうためにね‥」と、引き出しから取り出したのはラップされたレタス‥ではなく寄せ書き。

たった1ヶ月の僕に、冗談の通じない僕に、何でそこまでしてくれたのだろう。

わからない。分かっていることは、ただ、嬉しかったということだけ。


荷物整理やら部屋の掃除やらをしっかりしたなら、
農場カメラマンを少しやり、ブロッコリーを植えているみんなと何度目だかの最後のさよなら。


またどこかで会えるから、さよならを悲しむ必要はないんだ。

それにしても、どうして夏も冬も出会ったり別れたり忙しなくなってしまうのだろう。

疲れるけれど、惰性で回したくはないからかなあ。

代表に「観音寺」まで送ってもらい、2月とは思えぬ陽光の中、萩原寺でも聴いた心地よい音楽に僕は目を閉じた。

観音寺、ひっそりと高台に、居心地の良い寺。

電車で琴平へ。740円。

昼はうどん屋。
しょうゆうどんセット500円。
コシがある僕好みのうどん。お兄さんも優しい。おにぎりの塩加減と米の炊き具合が絶妙すぎて、危うく泣きそうだった。

何かが終わった味がした。
何かが終わってしまった味との違いは僕の舌では感知しきれない。


その後の話はまたにして、とりあえず、これにて香川農編はおしまい。

ヘタクソな生き方を、気にしてくれてありがとうございます。


香川のアメリカ、高松より。

おやすみなさい。

香川農29〜いつも通り

【僕がやったこと】
サニーレタス収穫。
サニーレタス根掘り。
リーフレタス苗植え。
サニーレタス出荷。

天気が落ち着いたので、僕も落ち着いていつものように仕事をした。

今日が最後なんて、そんな感慨を一切抱かないままに、仕事が終わった。

特に何かあるでもなかったので、現場リーダーとようちゃんと、うどん屋「ふくや」へ。

わがまま野郎は、わがままうどんで最終日を締めました。

たった1ヶ月、されど1ヶ月。

期間限定。いくら不確かだとしても、今日まであったものが明日からなくなるということについて、人として何も感じずにはいられない。


「結果が、最初の思惑通りにならなくても、そこで過ごした時間は確実に存在する。そして最後に意味をもつのは、結果ではなく、過ごしてしまった、かけがえのないその時間である。
何も生み出すことのない、ただ流れてゆく時を、大切にしたい。」

星野道夫、『旅をする木』より。

僕は手にした。手にした途端に失った。


人間は、なんて脆くあやふやである。

2013年2月27日水曜日

香川農28〜不協和音と星野道夫

2/26
疲れすぎたのでこんな時間に更新だ。電気を消しに動くことすらできなかった。

普通は米だけど、早起きとメロンパンと味噌汁から始まった今朝。

今にも降りだしそうな空。雨の匂いはするけれど、生ぬるい空気。太陽も出払ってしまった。

ああ、この不安定な感じ。身体から力が抜けていく。

収穫作業中、一騒動ありぴりぴりした空気。
ああ、何で今日に限って。
弱っていたからそう感じただけかもしれない。

出荷作業中、静かすぎる作業場に箱を作成するガシャンという音だけが虚しく響く。

トータル300個以上、僕はただただ、箱をつくった。

悪いのは、天気のせいではないし、まわりのみんなでもない。


僕は天気の悪いところには住めない。

いつにも増して、
天気にすべてを引っ張られた今日の僕には、やはり、これまでの疲労が何やかんやと蓄積しているのだろう。


僕が担当した作業自体は収穫で身体を動かしたくらいで、あとはずっと出荷作業。実に楽なはずであった。

質は違えど、しんどさは、二日目の夜に次ぐ。そんな一日だった。

天気に同調する感じやすい身体に、僕は振り回されるしかない。

ひどく疲れた。

早起きして下準備をした北海道の「いももち」をみんなにあげた。
おいしいと言ってもらい、ほっとした。

調子の悪そうなジャックスパロウが、アジアテイストのスープをつくってきてくれた。懐かしいタイの屋台を思い出す。
料理は文化。料理は心。

食を否定されることは、文化を、アイデンティティを否定されることとイコールだ。

朝、ようやく星野道夫さんの「旅をする木」を読み終えた。薄い本なのだが、ほぼ1ヶ月かかった。
文章としてどうのというより、星野さん本人がゆったりと語りかけてくる。死して尚、星野節は健在、か。
ニコルさんの本が纏うものと似ているような気がする。

彼らは言葉だけれど、言葉ではないところで語りかけてくる。まあ、反則技だ。
絶対的な人間力とかオーラの前で、言葉も霞む。
言葉に頼らない言葉。言葉はちと不服かもしれない。

2013年2月25日月曜日

香川農27〜つくるって意味では一緒やろ

今日は奇跡の17時30終了!
日中は、身体を動かしていることもあるが、北海道の初夏さながらの暑さ。一年で一番寒いはずの2月やで、しかし。

【やったこと】
タマネギ苗取り。初作業。
タマネギ苗植え。
サニーレタス収穫。
サニーレタス根掘り。


2日間体験で淡路島から若者が一人やってきた。経験値があるようで、タマネギ苗植え、はや。

昼は、大阪のシュバインシュタイガー氏とようちゃんと、うどん屋しみずへ。
汁気少なめのカレーうどんを食べた。

毎日顔を合わせていても、知らないことの方が多い事実は、
ありきたりだが、不思議なものだ。

何でも知っていれば偉い、というわけでもない。情や思いこみが、今現在のその人を見るための障害になっているケースは殊の外多い。

毎日顔を合わせることが当たり前になって、徐々に徐々に距離感が変わっていく。

一週間前なら聞かれなかった質問をされたり、
一週間前なら言えなかったことが言えるようになっていく。
一緒につくり上げる喜びを感じ出した途端に、目の前をチラつくサヨナラの文字。

これがきっと、そこはかとない無常感、とかいうヤツなのだろう。

カルマ曰く「執着せずに愛する」(『ダライ・ラマに恋して』/たかのてるこ)
という言葉がある。
実践はできずとも言わんとしていることは非常によく分かる。

野菜をつくりながら、同じ土の上で僕らも日々、つくりあげていたのだなあ。


みんなの食(=生)を支える農業という仕事。
農業は、大変な仕事だ。割に合わない仕事だ。
そういう仕事は他にいくらでもあるのだろうが、農業がなくなったなら、作物を自らの手でつくりあげたことのない僕らは?

効率を求めた分業化により、手応えや想像力を失った人、社会。
経済的には潤っても、一生物としての損失は計り知れない。

皆がそれぞれに自分たちの食べる分の作物をつくり、使う分の電気をつくり、小さなコミュニティー内で完結させていたなら、誰かだけが過剰な負担を背負うことなく、分け合っていたなら、世界は?僕らは?

農業は生命に直結する必要不可欠な仕事である。

どんな仕事よりも必要なのに、正当な評価をされていないのは何故だ。
ここのギャップ、歪み、これは、どこへ通ずる問題なのだろう。

第一次産業とは、はて何ぞや?



土は、想像と創造の場である。これは水に通ず。

すべての道は‥いや、すべての土は水に通ず。

土も水も、つまりはcreativeなアトリエで、
土と水の地球は、creative二乗の星であり、
その星に巣くう人間がcreativeでないはずがないのである。

僕らは皆生まれながらに、artistなのである。

それを忘れている人が実に多いように思う。

形に残ろうが残らなかろうが、お金にしようがしなかろうが、意味があろうがなかろうが、誰に理解されようが批判されようが、
つくり続ける、それが生かされている人間の業。

つくらずに生きる人間なんて誰ひとりいない。


生きる人は皆それぞれに、美しい。

2013年2月24日日曜日

香川農26〜観音寺の休日

観音寺の休日。last dayは、真っ昼間からの宴会。


全員ではないけれどちょいと写真を。

ビール、芋焼酎、梅酒、日本酒‥

たまたま、観音寺という交差点で、たまたま農業という道で出会った僕らが笑いあう。

たまたまここで笑いあう縁の不思議。

面白い時流に乗っていたことを改めて思い知る。

僕は偏屈な大馬鹿者だ。

いつまでも僕らは、ひとところにとどまってはいられない。

それは悲しいことでも嬉しいことでもなく、ただの事実。

1ヶ月前、ここに来る前の僕を僕は失った。

1ヶ月後、ここに来た僕を僕は手に入れた。

わからないことは多すぎる。けれど、だからこそ、最善を尽くそう。偽らずに探し続けよう。疑問を抱くことをおざなりにして、自分を誤魔化すくらいなら、存在を抹消した方がマシだ。

枯れる心配のない好奇心という源泉。
僕が僕たる確かな証。

僕は不器用で、僕はヘタクソで、僕はちっぽけで、僕は偏っている。
分かっていても変わらないから、受け入れる。付き合っていく。


"変わり続けるのさ 変わらない為に
空に漂う雲の様に
流れ続けるのさ 流される前に
風に逆らう鳥の様に"

Caravan「Changes」


ジュレー。
たかのてるこ(「ダライ・ラマに恋して」より)
曰わく、
"人生はジュレーに始まり、ジュレーに終わる。"

ジュレー。こんにちは。

ジュレー。ありがとう。

ジュレー。さようなら。

縁あったみんなに、ジュレー。



僕は、随筆家だ。誰がなんと言おうと。
僕は僕を、言葉に託す。
言葉に救われた人間として、彼に恩を返すことは僕の一生をかけるに値する仕事だ。
僕の世界を表現するのは、言葉しかない。言葉だけはある。

何でもできる。恥もかこう。核があれば、人は何にでも耐えられる。

香川農25〜ふたりの誕生日とお月見タマネギ苗植え

うとうとと寝落ちしてしまった。

2/23
【やったこと】
サニーレタス、リーフレタス箱作成。
サニーレタス出荷。
タマネギ苗植え。
13時20〜途中休憩挟み19時。

月が明るい。
暗闇の畑、もそもそと動く若者たち。
同じことでも太陽と月で変わる。
作業効率は太陽に軍配だが、見えないから見えるものもある。

代表と、もう一方がたまたま同じ誕生日だった。

誕生日の方がケーキを切り分けるのが、ここの習わしということで。

来年の誕生日に、彼女は「ああ、去年は観音寺でタマネギ植えてたっけな」と、感慨にふけるのだろうか。

四度目の土曜の宴。
ここでの最後の土曜。

「いいな」と言うならやればいい。

農業とは何ぞや?
その問いの答えは見つからない。簡単に掴めるはずもないのだが。

農業とは、
大変な仕事である。
仕事はまあ全般大変なものであるが。



水は自由、土は束縛。
水は非日常、土は日常。

旅を日常に捉える僕は非日常。

足下が確かかどうかより、執着すべき大切なことがある。


"僕が僕であるために"尾崎豊

2013年2月22日金曜日

香川農24〜耳をすませば

【僕がやったこと】
1リーフレタス出荷。

寒さで真ん中が丸くなり、普通のレタスのようになっているのが多い。
出荷先からクレームが来たらしく、選り分けに時間がかかる。

2農協へ配達
観音寺の農協は顔が広いらしい。運送業の倉庫みたい。

3リーフレタス収穫。
僕は切ったり、運んだり運んだり。

4リーフレタス苗植え。
初めての作業。サニーレタスは四列植えていたが、リーフレタスは三列でいいようで、とても楽だった。
耳をすませば、からのジブリ話からのレ・ミゼラブルなどなど。手を動かしながら口も動かす。

5サニーレタス収穫。
大量収穫。
収穫作業はしんどいが、やはり僕はこれが一番やっている感があると思う。皆が二十代と、若いこともあってか、部活のような気分。

農業は(も)チームプレイだ。
役割分担。自分には何ができるか。
僕はつなぎだ。

6リーフレタス出荷。
朝に同じく。必要量のみ箱作成。
サイズが大きくなるほど、真ん中が丸く、硬くなりやすいようだ。


19時すぎ、終了。

ふと鏡を見ると、夏と同じく、メガネ灼けをしている僕がいた。

髪、伸びたんとちゃう?

2013年2月21日木曜日

香川農23〜“何でやねん”と“やろ?”

一番の道具、手。

【やったこと】
ネギむき。
リーフレタス収穫。
リーフレタス根掘り。
リーフレタス出荷。

19時すぎ、終了。

出荷作業時、レタスの葉先が変色しているのが結構あり、手でちまちまと千切る手間も追加。

喋る気力も失い、発狂寸前だった。


昼はうどん屋「しみず」へようちゃんと、いぶし銀氏と。


眠いのでこのへんでおいとまします。

2013年2月20日水曜日

香川農22〜うどん中毒、発症

【やったこと】
ネギ収穫。
サニーレタス苗植え。
サニーレタス収穫。
サニーレタス出荷。
チビビニールトンネルのビニール締め。

カッパのズボンは農作業時にめちゃくちゃ重宝する。
濡れない場合はヤッケで済ませられるが、カッパは万能だから、下半身レイヤリングの締めはほぼカッパだ。
ここ数日でカッパの足下が擦れにより、穴あき化。
しゃがんだり立ったりしているうちに、開いた穴から長靴内に水が侵入した。

萎える。

バイク通勤から、何から何まで相当酷使してきたノースのカッパ下は農作業を20日ほど耐えることが立証された。
カッパは中にいろいろ着るので、大きめのサイズを買う。そのためズボンは無駄に長くなるから、擦れやすくなる。

登山のスパッツ作戦とか、有効かも。

消耗品だから、適当なもので済ますのが一番賢いか。

今日はサニーレタス出荷作業中にたまたま、関東サミットが開かれた。
自然に東的トークが展開。
オチはないが笑いがないわけでもなく、落ち着いたテンションで切れ目のない軽やかなキャッチボールがいつまでも続く。

‥ああ、これや。

会話は知的好奇心を刺激し合うための手段。会話は、その人に近づくために、自身を表現するためにある。

なんて楽なのだろう。
my sweet homeってか。



昼には伝説のうどん屋「しみず」へ、ようちゃんと向かった。
何が伝説って、日曜休みなので、なかなか行けないのよね。

店先に目玉商品の案内。
A定食600円。
生姜焼き定+うどん。

‥これや。即決。

入ってすぐ、おばちゃんに「A定食ふたつ!」

久しぶりに、優しい家庭の味がした。贅沢な気分。

もっと早く来たら良かった。

今日は17時半に仕事終了。

現場リーダーとようちゃんと、うどん屋「ふくや」へ。

ふくや特製の甘じょっぱい「わがままうどん」は九州仕込みの僕の舌にはドストライクなのだが、挑戦することも忘れてはならないので、今日は「ちゃんぽんうどん」+かきあげにした。520円。
とろみがあったなあ。

テレビでは岡山のはだか祭りのニュース。

帰り道すがら、現場リーダーの住処でちょいとお喋り。


終わりが見えてくると、名残惜しい気持ちが芽生える。

僕は、いつもいつでも、わがままうどんだ。


みんなが美味しいと感じなくても、
たったひとりが感じてくれている限り、
僕はわがままうどんであり続けようと思う。

同じ味を守り続ける確かなお店が、ワケの分からない世の中には必要だ。

2013年2月19日火曜日

香川農21〜白い恋人、雪の歓待

雲辺寺山もうっすら雪化粧。午前中は雪が降り続いた。

大阪もインドネシアもあまり雪が降らないらしく、みんな目を輝かせていた。
僕は雪を見、支笏湖や尻別川でカヌーを滑らせた去年の春を思い出した。


【やったこと】
ネギむき。8〜12時20分。
リーフレタス収穫。
サニーレタス出荷作業。


久しぶりに18時に終わった!

新しい風が吹くと、すべてが一変する。

分かりやすいけれど、不思議な場所だ。
面白い。ここは本当に面白い。

女の子は、すごい。
女の子は、女の子でありさえすればいいのだから。

少し前まで僕も戦力外の手間増やし要員だったのだよなあ。
と、横目に彼女たちを見やりながら、リーフレタス収穫をした。

リーフレタスは根が、水を求めて下へ下へ伸びる。下には水だけでなく菌もうようよいる。
なので、横に根を伸ばすサニーレタスよりも病気になりやすい。


今夜のおかずは、愛媛県産のアジの開き二尾で半額100円。

2013年2月18日月曜日

香川農20〜ネギと左手と新人さん

【やったこと】
ネギ収穫。
ネギ洗い。10時30〜18時30。

夏ならまだしも、二月の雨中ネギ洗いは、過酷だ。僕は無になる。

僕は右利きだが、ネギ作業全般の細かい作業は、何故だか左手の方が使いやすい。
が、左手は力があまりないので親指の付け根あたりから、使いすぎ警告が出る。
自分を乗りこなすのはなかなか難しい。

休み時間に、ふと漕ぎたくなって、ほうきでイメトレ。
ああ、漕ぎたい。カヌーさわりたい。パドル持ちたい。ああ、浮かびたい。流れたい。委ねたい。

パドルを手離して三ヶ月。
僕は水が好きだ。
水の上には、自由だけがある。


ほうきを振り回す不審者に、ようちゃんが訝しげに声を掛けてきた。


(僕はほうきで空を飛ぶんだ。)

ここに来てからずっと、東と西の違いを常に意識している、意識させられている、ことに気が付いた。

西で、東と北を知る。

西にいることで、僕の中の東と北が、際立つ。

すべてのことが、腑に落ちていく。

歩いてきた道がやはり確かであることに気付くというのは、悪くない。全く持って悪くない。

僕は導かれるまま、これまで通り、手の鳴る方へ進めばいいだけだ。


明日から新人さんが二人。
人の出入りの多いところだ。

2013年2月17日日曜日

香川農19〜丸亀市猪熊弦一郎現代美術館と、丸亀城の石垣アート

休み!
意外と普通な時間に目覚めた。
先人が残した香川ガイドブックをパラリと見やる。
あ、これだ。僕が欲しいのは、寺でも神社でもなく、アートだ。

観音寺駅まで自転車を20〜30分走らせたなら、電車で丸亀駅を目指す。途中多度津で乗り換えて¥540。

狙いを定めた、「猪熊弦一郎現代美術館」は、丸亀駅南口すぐ。
丸亀駅のでかさに驚いた。郡山くらいあるぞ。

猪熊さんは、あらゆる表現法を模索し続けた方らしく、絵によって雰囲気が変わる。
パリを目指していたのに途中のニューヨークに心を奪われ20年滞在したとか、素敵エピソードも。

あっ、これ惜しい!と思う作品が何点かあって、ぶつくさと呟く。
どういじくれば僕の好みになるのかは分からんが、好きな絵のイメージは、はっきりと脳内にあるようだ。

ポストカードを吟味したら、今度はセルフうどん屋「まごころ」でまごつく。
悔しいけれど、よそ者っぽさ全開やん。うどんを温める湯があったり、自分でうどんを取ったり、複雑多岐に渡るシステムに目が回る。恐るべし、個人店っぽい店。

飛ぶ鳥落とす勢いで乱立するチェーン店「丸亀製麺」は、超初心者向けだから、受け入れられて浸透しているのだな。

僕はぶっかけと共に完全なる敗北感を味わった。
でもね、そういうの、嫌いじゃない。むしろ、好き。
恥はかいてなんぼ。

しっかし、お客さんは子供からおっさんまでみんな手慣れている。
うどん文化は本物だ。

「ふくや」のうどん以上には到達せず。

うどん後、日本一の石垣(高さ60メートル)と、日本一小さい天守閣(三階建ての家)の丸亀城へ。

途中には、七尾旅人ではあるまいが、シャッター商店街。昭和レトロというか、しなびて古びた地方の現実、か。閉塞感。うーむ。イメージよりずっと寂しいところだ。

突然背後から、「旅行かい?」とサングラスの強面に声を掛けられた。

全身黒ずくめの男の名は、きんちゃん。

仕事で東京にいたときは、新宿のディスコで遊んでいたこともあるらしく、あれこれ世間話。

きんちゃん曰く、
「事情があって帰ってきたけれど、帰りたい人なんかいないよ。香川は災害とかがないから、助け合う精神がない。自分さえよければという気質。保守的、排他的だがプライドは高い。‥同じ四国でも高知は全然違う。行って欲しい。あっちは台風とかいろいろあるからか、とにかく人が気持ち良いんだ。まあ最近の若い人はまた違うだろうけど、環境的要因は大きいよ。まあみんながみんなではないから、そのへんは勘違いしないでよ。‥」

きんちゃんの目から見た香川の一側面。

見た目に似合わずlineを使いこなすらしいきんちゃんの撮影を終え、その場を離れようとすると何故だかティーバックと、ジョンソンエンドジョンソンの綿棒をくれた。

妙な交易を思い返し、ニタニタしながら、丸亀城へ。

石垣を愛でながら歩く。あそこはどこにつながるのだろう。確かめている内に戻らされたり、さすがは城だ。迷い込んでいるのは僕くらいか。マチュピチュに来た気分。先々週も「豊稔池」でマチュピチュを感じた。
小説家のようちゃんも、伊吹島でマチュピチュを感じたらしく、香川はマチュピチュへ通ずる扉が多いように思う。

団体客もちらほらと。

てっぺんからは瀬戸大橋や讃岐富士。富士といってもかなり低そう。香川は高い山が少ない。

にしても、石垣の立派さとのギャップがいいね。丸亀城。

帰りにマルナカで買い出しをしていたら、現場リーダーと彼女に遭遇。

身体は休まらないが、人間だもの、遊びがなければ発狂してしまう。

‥え?一年中遊んでいるだろって?

香川農18〜Mr.ビーン

ハッピーサンデー。週1休み、過酷だ。

写真は東京でも北海道でも見ない納豆。四万十、体内に注入。

【やったこと】
リーフレタス、サニーレタス出荷。
サニーレタス収穫。
サニー出荷。
ネギむき。

終了、19時。
今週はずっと19時終了だ。身体は順応したが、しんどい。

僕には北海道が、東京が、カヌーが、言葉が、友人が、家族が、ある。

何かを手にした、‥それはつまり、一方では何かを失ったということでもある。

突然、現場リーダーに「Mr.ビーンに似てる」と言われる。
あんな毛むくじゃらじゃないわ!と返すと、
「顔は似てないよ。面白いところが似てる。日本人は分からないだろうが。」
と。

僕のセンスは彼には通じているのだなと、何となく、あまりMr.ビーンのことも知らずにイメージでしかないが、何となく思った。

僕のユーモアを、生き方を、理解する人は少数なのだろう。もっともっと大切にしなきゃ。

本当に、いつもありがとうございます。
サティシュ曰く「君あり、故に我あり」です。
あなたがいなければ僕はいません。


自分や他者を蔑んで笑いに変える文化の不思議。
笑いはそんなに必要なのか、沈黙が好物な僕にはよく分からない。

まあ、いつもこれでまとまるのだが、
世の中にはいろんな人がいる。
住んでいる世界の違う方と関わる機会は逆に貴重だ。

2013年2月15日金曜日

香川農17〜手づくり弁当

今夜は星よりも月。くっきりはっきり三日月だ。


【(僕が)やったこと】
8-12リーフレタス出荷。
途中小休止あり。
昼休憩1h。

13-14ネギ収穫。

無意識で関西弁を発していたらしい。僕が染まりやすいのか、関西弁が強烈なのか。

14-1530リーフレタス収穫。
16-18サニーレタス収穫。18〜片付け。

昼間にズリさんが手料理を差し入れてくれた。
う、嬉しすぎる。パスタなんて何十年振りだろう。

この頃、醤油と焼き肉のたれづいている僕の舌が新しい味覚に興奮した。エスニックな甘いAsiaの味。
ああ、手料理ってええなあ。女の子がつくってくれるって、ほんまにええなあ。好きやねん。

インドネシアはほとんどの人がイスラム教。
豚肉とラマダンと陽気で真面目な彼ら。
僕は香川で、人為的無理くり線‥"国境"をひょいと越えるのだ。



★三月二日、ニコルさんに会いに東京に行くか悩んでいる。めったにないチャンスではある。
東京に行かなければ、このまま四国・九州をまわれるのだが、昨今は飛行機も安いからなあ。道具の入れ替えもしたいからちょうど良いっちゃ良いか。

念願の四国で、今度はお隣九州に惹かれる始末。

博多、長崎、桜島、錦江湾、日南‥。

三月は1ヶ月動けるけれど、他の農業現場も見てみたいのであまり時間がない。

三月、あれから丸二年が経つ。

世界は変わらないけれど、世界から逃げ出すことはできない。僕は世界に期待する分も、自分や友人にあてる。

世界=人間界。地球ではない。


農業、四国、九州、安宿、カヌー、カヤック、ご当地グルメ、などなど、わくわく情報も随時募集中です。

2013年2月14日木曜日

香川農16〜上がったら下がる

ゴム手。左のニトリルの方が薄くて使いやすかった。

【やったこと】
リーフレタス収穫。根掘り。
サニーレタス収穫。根掘り。
タマネギ苗植え。
リーフレタス出荷。

今日も19時over。


堂々巡りの思考。
何なんだろう。誰も彼も不思議でならない。
人間界は本音だけではやっていけないのだろうか。
どうやら僕は頑固らしい。今まで気付いていなかったことに、戦友的友人が驚いていた。

我慢を知らず、好き勝手に今までやってきた。それでも許され、生かされてきた。きっと間違いなくこれからも、ね。
これはひとつの才能だ。


浅い川こそ深く渡らねば。

今日もタマネギを植えた。僕は人に飢えているので戦友的友人を頼った。


僕は江戸っ湖だから、熱いくらいでちょうど良い。

キョリも越えるよ、ありがとう!

3月2日(土) C.W.ニコル・アファンの森財団 10周年記念シンポジウム開催  ~森から考える日本の未来~


★雰囲気ありまくり、黒姫の赤鬼に会えるチャンス!参加費無料、太っ腹!

怒るとき、楽しいとき、…ありのままに表現するニコルさん。僕は彼の一ファンなのである。
佇まいだけで表現できる人間に、僕もなりたい。


3月2日(土)
C.W.ニコル・アファンの森財団 10周年記念シンポジウム開催
 ~森から考える日本の未来~

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  →(http://www.afan.or.jp/afan_now/2013/02/10-3.html)
  →(http://www.afan.or.jp/afan_now/2013_pic/10th_Flyer_Light-ver.pdf)

28年前、C.W.ニコル個人の思いから始まった長野県信濃町黒姫の地での森づく
り。よみがえった小さな森から日本の森を考えるために財団法人を設立し、10
年目を迎えました。それを記念して、理事長C.W.ニコルの想いと、アファンの
森財団に関わっていただいている方々との想いを繋ぐリレートーク形式のシン
ポジウムを開催します。
ニコルとともに約30年、アファンの森の再生を手がけてきた松木信義と、アフ
ァンで生物調査をつづけている麻布大学の高槻先生より森に暮らす生物の代弁者
として「森づくりとは何か」を考えます。
また震災以来、日本の在り方を見直すために東松島市で取り組んでいる「復興の
森づくりと森の学校プロジェクト」について、被災地の方々をお迎えして、森か
ら見えてきた日本の未来の姿を皆様と探っていけたらと考えています。

参加費は無料です。多くの皆様のご参加をお待ちしております。

【プログラム】
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第1部  基調講演 『森から考える日本の未来』  C.W.ニコル
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第2部  リレートーク 『アファンの森から考える森づくり、国づくり』
        第1章 「森をつくるということ~アファンの森から」
              C.W.ニコル、松木信義、高槻成紀
        第2章 「日本をつくるということ~震災復興にむけて」
              C.W.ニコル、畠山信、佐藤伸寿、風見正三
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■日時 : 平成25年3月2日(土)
      13:30~16:30(終了予定) (受付 13:00~)
■会場 : 青山学院大学 青山キャンパス 本多記念国際会議場(17号館6階)
      東京都渋谷区渋谷4-4-25
      (JR、東急線、京王井の頭線、東京メトロ副都心線、他「渋谷駅」
              より徒歩15分
       東京メトロ銀座線、千代田線、半蔵門線「表参道駅」より徒歩5分)
■お申込み方法 :
            お名前、ご住所、ご連絡先(自宅、携帯、FAX)、Eメールアドレス、
            ご同伴者様のお名前をご記入の上、郵送、FAX、Eメールのいずれかの
      方法でお申し込み下さい。
■定員 : 500名 ※定員になり次第締め切り
■参加費 : 無料

□主催 : 一般財団法人C.W.ニコル・アファンの森財団
□共催 : 青山学院大学 総合文化政策学部
□協力 : 一般社団法人東松島みらいとし機構、東京環境工科専門学校

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◇お申し込み・お問い合わせ
 一般財団法人C.W.ニコル・アファンの森財団
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2013年2月13日水曜日

香川農15〜昨日より今日

無我の境地で作業に集中しているうちに裂いてしまった命のゴム手。中にはインナー綿手袋着用。
15日間ありがとう。

【やったこと】
8-10ネギ選別、むき。
小休止
1030-1210サニーレタス、リーフレタス収穫。

1210-1310昼休憩。

1310-1500サニーレタス苗植え。
小休止。
1530-19サニーレタス、リーフレタス出荷作業。


今日は三つの扉が開いた。
ゆずじゃないけれど、「昨日の俺は俺にあらず」だ。いい意味でね。

1。収穫作業にて。
今まででいちばん気持ちよく決まった日。
農作業は(も)チームプレイだ。フォーメーションとか各人の特性、戦略を考えるのは好きだ。
ここ数日、作業メンバーが固定されていたのもある。
だんだん全体が見えてきて、みんなの能力や適性も見えてきて、その中で自分には何ができてどれを優先すべきかが分かり、動けるようになってきた。

いちばんやりがいを感じる作業かな。消耗も激しいが。

2。サニーレタス苗植えにて。スコップを使いこなせるようになった。

今まではスコップを扱いこなせず、素手(ビニ手ですが)で土を掴み握力の限界に挑んでいた。
今日は一回目で断念したスコップにまた手を出してみた。
人それぞれやり方は千差万別。ちらちらと技を盗み見し、組み合わせて自分なりのやり方を編み出すことに成功した。

3。サニーレタスの形整えの素早さ会得。
出荷作業時に収穫したレタスの根っこをちび包丁で切る工程にて。
これはただ切るだけでなく、へたったり変色した葉もいくらか落とす。サイズ調整目的の場合もあるが。
根をどこまで切ると、葉はどこまで落ちるかが予測できるようになった。
ぶっ続けで三時間半ほど。陽気なセクシー代表の安定ハイスピード箱詰め作業に遅れまいと必死で食らいつく。

持続集中力が身についてきた。これはどこでも通用する素晴らしい能力だ。


できなかったことができるようになる。これは快感だ。つまり、もっとできるようになる。これが確信だ。

quality of life。
生活の質向上委員会は好調だ。

いつからここにいるか分からないと僕が感じているように、みんなも昔から僕がここにいる気になっているらしい。
ここには不思議な時間が流れている。

人間だもの。いろいろ思う。昨日の僕はもういない。書いた瞬間、それは既に「僕」ではない。
これを書いているのは紛れもない僕だけれど、本当の「僕」はここにはいない。本当の僕は香川県観音寺にしかいない。晒したところで晒しきれるはずがないのです。


今日の献立。
朝、納豆と味噌汁。
昼、もらったお好み焼きもどきとご飯。大阪出身未来の小説家・ようちゃんに「正解っすよ」と言われる。
夜、ラーメンご飯。

2013年2月12日火曜日

香川農14〜崇拝しすぎてもいけないけれど

【やったこと】
サニーレタス出荷。
タマネギ苗植え。
ネギ収穫。
ネギ洗い。
サニー出荷。

終了は19時すぎ。


僕は言うことがコロコロ変わる人を尊敬しない。

納得がいかないときに、うまいこと流す技術を体得していないのは必要性を見出していないから。
それで生きてきた。

一般的社会不適合者としては合格だろう。

「この前と言っていること違いますけど」
パッとその場で応戦できるほどの器用さも持ち合わせていない。

つくづく、損な性格だ。


「この人、すげー!」
そう思わせてくれる人に出会い続けてきた。
その人たちには、僕は誰よりも従順なつもりだ。

人に妥協はしない、したくない。

2013年2月11日月曜日

香川農13〜ニーポジションと苗植えポジション

【やったこと】
8-12:40ネギむき(内30分ほど小休止)
12:40-13:30昼
13:30-16:00サニーレタス大収穫
16-16:30小休止
16:30-18:20玉ねぎ苗植え

身体が慣れて楽になっていく。やめたらすぐなまるのはなまら悲しい。


攻め気でカヌーを楽しむ場合、ニーポジションという膝付き低重心化スタイルがある。
膝が痛くてできなかったり長時間できないという方もいる。

僕も最初はアザばかりつくっていたしすぐしびれてしまっていたが、気が付いたら慣れた。


痛いからやめるのでなく、痛いから、ツラいときこそ続けてみる。唯一にして最大の敵は己。

とにかく、苛め抜く。すると、ひとつ、サッと自由になる。身軽になる。
できることが増えるのは、単純明快感。

僕はマゾだとよく人に言われる。

香川農生活も最初は身体がバリバリだった気がする。でも、慣れた。
身体は「いきなり何やらすんじゃいぼけ!」とぶつくさ文句を言いたいだろうが、残念ながら彼には口がない。

悲しいかな嬉しいかな、人は慣れる。身体も心も。
ずっと夢中でいたくても、いつか夢中にも慣れてしまう。
好きな人やいつもの仲間も、今の僕には遠い異国のお話だ。勿論元気であっては欲しいけれど。

身体よりずっと単純なのはこの心、か。


ずいぶん長いことここにいる気がして、ここに来る前の僕は何をしていたのか、あまり覚えていない。

僕は今、ここにいる。この世界においてこれより他に確かなことなんてないのだ。

2013年2月10日日曜日

香川農12〜二回目の休日

各地にハガキを書いた。

前日に、長期で働いている方々が昼間に焼き肉会を開催するということで声をかけてもらっていた。
(結局僕らは参加しないことになったのだが。)

朝のうちにマルナカへ一週間分の食材を買い出しに。2000円ほど。

昼をすぎても一向に連絡が来ないしつかない。やらなくなったのかな。
‥天気も良いし1ヶ月滞在の僕らには貴重な休み。
小説家のようちゃんとママチャリで琴弾公園へ。
寛永通宝の銭形砂絵を展望岩からさらっと眺めてから、
クジラのような伊吹島やまんまるい円上島の浮かぶ瀬戸内海にご挨拶。
遠くにうっすらと見えたのは広島だろうか。

有明海岸を端から端まで歩いていたらカラスがイノシシの死骸をついばんでいた。

自転車を停めていたところに戻ると、
「ふう。何か歩いているとき、時間の流れがちゃいましたね。ここにチャリ停めたの、ずっと前の気がする」
と、ようちゃんが言った。
そう言われればなるほど確かに。僕だけなら見過ごしていたかもしれない。
ふたりで歩くと、目が四つ。発見が多い。
歩くのは、ふたりがいい。

今日のうどん屋「まるいち」は外れ。柔らかすぎた。


僕は人付き合いに関して潔癖すぎるのだろうか。

2013年2月9日土曜日

香川農11〜休日前の酒宴

朝は2℃。日中あたたか。

【やったこと】
サニーレタス出荷2、5h。
ネギ収穫。
ネギ洗い4h。

装備が乏しいので、手先が濡れる。夕方のネギ洗いは冷えた。
ちなみに非常識な僕は今まで何も気づかなかったが、関西は青ネギ。関東は白ネギだ。
愛知は青ネギなので、ネギ線は静岡にあるのかな。

なにくそと気合いを入れつつ、ひたすら目の前のネギを洗う。

ふと、洗い終わったネギの束に目を奪われた。

水をはじく青ネギの美しさ。

過酷な作業をこなすからこそ、開いた扉。

ああ、何て世界は美しいのだろう。

これが噂のネギアートか。

いつもより一時間早く終了。

一週間お疲れ様の意味で豚肩肉×玉ねぎ炒め丼。

小説家と祝杯をあげながら今宵も大いに盛り上がったとさ。

2013年2月8日金曜日

香川農10〜タフday

一週間で身体のサビを落とせる。長靴の泥は落としていないが。

朝は冷えて雪が少しパラついた。昼は太陽が出てあたたか。

【やったこと】
ネギむき。
リーフレタス収穫。
リーフレタス根掘り。
サニーレタス収穫。

教え方が人によって変わる。良いあんばいを探る。


何で四国なのか、何で香川なのか、何で観音寺なのか。いつまでやるのか。何のために。

みんながみんな、答えは風の中みたいだ。
僕もまあ、そんなに深い何かがあるでもない。
ただ、知りたいだけだ。

何でかたまたま他でもない"ここ"に導かれた数人の若者。
考えてみたら不思議な縁ではないか。

理由をガッチリ固めなくても、足は出せる。

目の前を水が流れない人もいる。流れに気づかない人もいる。気づいても乗らない人もいる。乗ったら浅いかもしれない。臭いかもしれない。つまらないかもしれない。乗れば分かる。分かったときには乗り換えたくても岸ははるか彼方で覚悟を決めるしかないかもしれない。何でもいいじゃないか。どうなっても面白いじゃないか。



大切なのは、今、何をやっているか。それだけでいいと思う。大事なのはそれだけで、誤魔化さずに表現し続けていればいい。ひたすら苦しめばいい。
どこかで誰かは見てくれていて、何かを受けとってくれている。
やっていることに自信が持てないなら、恥ずかしいなら、やめればいい。

‥まあ僕には背負う荷物がないから言えるのだが。病的にこだわるよ。自分を嫌いになったら生きていかれないからね。



サニーレタス収穫は前半人が少なかったので、かなり疲れた。
ぐちょぐちょロードで運搬をひたすらこなした。

昨日、三日間体験の方が東京から来た。


関東、関西圏は移動民族なのだろう。
支笏湖に来る人も、関東と関西が多い。意識が高いから外に目が向くのか、単純に金銭的ゆとりがあるからか。
どちらもセットか。美人は性格が良いと言うし。

夜はうどん屋「ふくや」の特盛りをいただいた。

2013年2月7日木曜日

香川農9〜「青空」を口ずさむ

【やったこと】
サニーレタス出荷作業。
サニーレタス苗植え。
寒さ対策でブロッコリーにシートかぶせ。
リーフレタス収穫。
リーフレタス出荷。


小説家(僕の感覚的ニュアンス日本語を的確に解す強者)との半共同生活はうまいこと回っているのだが、炊飯器の調子は上がらない。
水加減の微調整が難しい。今回は芯が残りまくった。
水を多めに入れたにも関わらず。

朝は、納豆ごはん。
昼はきざみチャーシューねこまんま。
夜は米を断念してラーメン。


少しずつ、なんとなく会話を重ねていくことでわかってきたこともある。

インドネシア組は、普通に出稼ぎにきているようで、「なんで農業?」と問われても、そりゃ困るわけだ。
彼らはよく働く。手先が器用で明るい。
ふと、アジアのどこぞやの工場とかに来ている気になる。

家族と離れ、異国で働く若者たちと僕らとは、何がどう違うんだろう。
同じ人間だ。
違うのはただ、生まれたところ、か。

まあ本当のところは分からない。出稼ぎは当たり前なのかもしれないし、異国で生活ができるのは楽しいかもしれない。


‥生まれたところや皮膚や目の色で
一体この僕の何がわかるというのだろう〜


本当だよ、こんちくしょ。

大好きなブルーハーツの「青空」が今日の鼻歌になった。


長いことずっと、ここにいる気がしている。ここに来る前の僕は、どこで何をしていたんだっけか。



いろんな農家さんを知りたい。それぞれの農業を知りたい。
具体的技術云々というより、姿勢や思考、価値観や生き様をどかんと見せつけられたい。
魅了されたい。思いっきり敗北感を味わいたい。

農業という表現方法を、その人のアトリエで、その人の言葉で、聞いてみたい。

何か情報等あれば場所は問わないので、ご一報くだされば有り難いです。人手が足りないとかでも勿論。


そうか、僕は「農業」ではなく、「農業をやっている人」にフォーカスを絞っている(いた)のだなあ。

2013年2月6日水曜日

香川8〜何で?

くもり。体感気温、6〜8℃。

【やったこと】
リーフレタス、サニーレタスの出荷作業。
ネギむき。
ネギ収穫。

その後、東京から三日間来ていた子の見送りも兼ねて?みんなでうどん屋へ。

帰り、ちょうど農家さんと二人に。
カヌーの話をしていたら、お金のことを聞かれた。

『お金云々がどうのというか、とにかくやりがいだらけの仕事です。』と答えた。

サラリーマンを何年か経験してから、農業の道を行く代表に聞いた。

僕『何で農業なんすか?やりがいですか?』

「当たり前やろ。他に何がある。年によっては、稼げないときもあるけど、全然気にしない。そういうときもある。同い年で700万稼ぐヤツもいるけど、俺のがむちゃくちゃ幸せや。‥金がなくても使わなあかんで。世の中を回さないけんからな。‥」

『そうですか、やりがいだらけって本当に幸せなことなんすね』

「そうや!‥」



話は変わって‥
各地から人が集まるカオスな職場にあって、僕は今、東京を見直し始めている。

東京弁の美しさ。洒落っぽい小綺麗な響きは僕の耳にすんなり馴染む。

何より、東京の懐の深さ。この街はどんな人間をも許容する。どんな人間も。
人と人との距離の取り方、バランス感覚が絶妙で、やりすぎず、やらなすぎず。打てば響く。

居心地のよさは、距離感が一致するかどうかによるところが大きい。


地方に生まれたマイノリティたちの気持ちが初めて分かった気がする。

東京は、よそ者、はぐれ者の街。
散々寒い思いをした人たちが、最後の力を振り絞って、ぬくもりを求めて向かう街。
きっと、彼らはただ、人として扱われたいだけ。人を愛したいだけ。
東京の人たちの多くは、かつてのはぐれ者だから、気持ちが痛いくらいに分かるんだ。昔の自分がやって欲しかったように、そっと寄り添うことができるんだ。


地方のカスが、東京ではいっとう輝く。

多くの命をつなぎとめる救済都市、東京。


僕は東京が好きだ。

2013年2月5日火曜日

香川7〜外作業尽くし

洞爺の福島さんに教わったウイスキーのお湯割りが僕にはちょうど良い。安かったのでブラックニッカ。


明日から雨か?雪か?
なので、終日外作業。

10℃(体感)を切る時間がいつもより長く、風が冷たかった。
長靴が地味に染みてきているのは気のせいではないようだ。おいおい「プロノ」(北海道の洒落オツ作業着屋さん)やい。

【やったこと】
リーフレタス収穫二時間弱。
タマネギ苗植え。10時半〜18時(昼休憩1h内で郵便局へ)


同じ作業をひたすらこなす。ひたすらキツい。身体もだが、それより精神的に応える。農作業は心身共にタフでないといけないようだ。

お百姓さんは、ひとつひとつに祈りながらつくってはいない。少なくとも僕は祈っていないし、誰がこれを食べるのかとかいったことにもサッパリ関心がなくなった。

香川2で悶えたのと同じ作業だが、たった五日後、sensitiveな僕はもう消えた。移り気な自分を責めるより、備わっている適応能力を誉めることとする。

目の前の仕事を淡々とこなす。
それは、良いことでも悪いことでも何でもない。

どんな業種だろうと、
仕事、生業というのは、日常だ。
いちいち感じていたら持たない。
‥人間って、不完全ながら、うまいことできているんだなあ。


昨日のタイトルに書いた新人さんは三日間滞在。

どんな人にも優しく教える現場リーダー(インドネシアの陽気な22歳)。
教えるのは大変だ。根気がいる。
教えてもらったことを無駄にしてはいけないと、改めて思った。感謝の念とともに。

小説家と今宵はジブリやら宗教話。

2013年2月4日月曜日

香川6〜新人さんいらっしゃーい

今日は雨が降ったりやんだり。

香川は雨が少ないので、水不足に備えてため池が至るところに点在している。(雲辺寺ロープウェイ情報)

【やったこと】
ネギ収穫、サニーレタス収穫、サニーレタスの根掘り、ネギむき、ネギ収穫。

初めての作業もなく、初回に比べ、だいぶ作業スピードが上がった。

何キロあるか分からない道を歩くのと、
何キロで着くか分かっているのとでは、
消耗するエネルギー量が違う。


ふと、新谷暁生さんの言葉を思い出した。(ニュアンス↓)

「いちばんの道具は身体。道具は使うものだ。そして、使えば壊れる。」


道具の性能は決して良くはないが、扱い方は心得ているから、最大限引き出すことができる。

2013年2月3日日曜日

香川5〜四国霊場第六十六番札所「雲辺寺」と「豊稔池」

自転車馬鹿の誕生日。おめでとう!

毎週日曜日はみんなお休みということで。

とりあえず、未来の小説家と自転車で近くのスーパー「マルナカ」へ買い出しに出た。
食が荒むと心が荒れる。一週間分をまとめ買い。3000円しないくらい。

物価は特に安くはないようだ。

帰りがてら、大野原萩の丘公園へ。瀬戸内海を一望できるポイントでテンションが上がる。初日に港から確認した伊吹島も見えた。

僕らのいるところは平坦な盆地であることがよく分かる。

ここは萩原寺(四国別格二十霊場第十六番)にもつながっていた。

天気が良いので、そのまま、雲辺寺へ行くことに。
時折気合いの奇声を発しながら、延々続く坂道をママチャリ漕ぐこと約一時間。
斜面にはみかん畑。青森はりんごだらけだったが、ここいらはみかん大国で、あたたかい土地にいることを実感する。

未来の小説家は、田舎的風景にめちゃくちゃ感銘を受けているようで、
変ぴなところをひた進み、擦れてしまった僕にはなんだかとっても微笑ましかった。羨ましかった。僕が感じないところで、彼は感じる。
経験を積むことで失われるものがある。
年をとるのは一向に構わないが、心が簡単に振れなくなっていくのは、困ったもんだ。

寄り道をしながら、ようやく雲辺寺へ向かうロープウェイ乗り場に着いた。
往復二千円に尻込みしつつ、ここまで来たのだからえいやと乗りこんだ。

山頂には「スノーパーク雲辺寺」というスキー場もあるようだ。

四国の霊場の中では一番の高さ。標高927メートル。

ロープウェイが通っていなければ、雰囲気は全く違ったろうな。

雲辺寺山は、香川と徳島の県境にある。国境気分で、得意げに跨いでみた。

戻りは違う道を雄叫びを上げて気持ち良く下っていく。
途中、左手に「豊稔池」という誘惑が。
ほいほいつられてまたしても、サケのようにひいこらと漕ぎあがる。
小説家も、ニタニタ寄り道野郎なのだった。

豊稔池は、まるで、マチュピチュ。まるで、ラピュタ。僕らの中の子どもがはしゃぐ。
かつての栄光。プライドの隙間に孤独。
月刊誌「まちゅ★ぴちゅ」を制作後に、こうなるとは。そろそろ、お許しが出たのかもしれない。

あとで調べたら、ここの雰囲気ありまくりダムは「日本最古の石積式アーチダム」とのこと。
普通の観光が好きならオススメはしないが、そうでない方には一見の価値あり。

2008年冬に旅立つつもりで買ったツーリングマップル中国・四国編。四年後日の目を浴びるなんて、誰が予想しただろう。
僕はこの地域のことを何も知らないで、ここにいる。当たり障りない付加情報はいらない。僕は僕の地図をつくるのだ。

生活と旅のあいのこ的暮らし。
ここが四国なのか、香川なのか、観音寺なのか、そういった認識は特別ないし、僕にはそんなもの必要もなくて。
掴まずに、まっさらな目で、ただ、ありのままを見る。それでいいと思う。
本当に、普通な、イメージ通りの日本の田舎と、地方の人。

ただ、何の縁でか、たまたま、僕の拠点は今ここにあるのです。

香川4〜四日ぶりの文明

やったこと
1リーフレタス出荷用箱詰め。サイズやら整形やら。
2ネギの出荷用箱詰め。
3苗を入れていた箱やらの用具洗い


いちいち、手間がかかっている。時間も人手も必要だし、天気ありき、身体にもきつい。

カヌーガイド業時より腰に負荷がかかる。
長くやると、腰やら膝がダメになる。


農業は、「仕事」にするべきではないんだろう。
農業は、みんながそれぞれに自分たちの分をつくるべきだったんだろう。

いつから農業という仕事が生まれたのかな。

みんなの分をつくる農家は、ただただ、大変だ。
それでお金を得るわけだが。

疲れに香川初ビールが混じり合い、書きながら寝てしまっていたようだ。

こちらは、毎週日曜日が休みとのこと。


買い出し、周辺リサーチ、カメラ、「まちゅ★ぴちゅ」発送、手紙、睡眠‥
時間がないなあ。

2013年2月1日金曜日

香川3〜隣人がやってきた

やったこと。
サニーレタスの苗植え。
ネギ収穫。サニーレタス、リーフレタスの収穫、出荷準備。

途中で雨。
睡眠不足もあり、疲れた。
格段に会話のやりとりが増えた。みんなが、僕の存在に馴れてきた。
僕がいくら人見知りをしなくても、人はよそ者を警戒する。
こちらは、妙なことをせずに、ゆっくりと待っていればいいだけのことらしい。


数日前の永松さん、昨日の北国の極悪オヤジさん、コメントありがとうございます!

極悪オヤジさんには、星野道夫さんを引用して、コメント返しとします。

「人の心は、深くて、そして不思議なほど浅いのだと思います。きっと、その浅さで、人は生きてゆけるのでしょう。」

『旅をする木』

昨日の僕は深すぎました。今日は軽いです。まるで別人です。


今夜は雨の音を聞きながら、小説家志望の隣人との会話を楽しみました。
会ったばかりですべてを晒す変人に驚いていました。

そうか、ここ数日の僕に足りていなかったのは"会話"だったのだ。
僕は書くことが好きだけれど、喋るのも負けないくらい好きなことを実感。
どちらもひとりではできないのが良い。

彼には作業初日を前に、いらん話ばかりしてしまいましたが(ちと反省)、いちばんおかしいのはこの僕だから‥何の参考にもならないだろう。

香川2

写真は夕飯。久々自炊生活。米は提供してもらいました。
ウインナータマネギコンソメ丼と納豆と味噌汁。塩を身体が欲し始めた。

朝、7時半集合。
タマネギの苗を、ひたすら植えた。
植える前に小難しい名前の薬品に漬けた。
殺虫剤的雰囲気。
見てはいけないものを見てしまった気分。その苗をこの手で植えた。温暖な気候、外作業。気持ち良いはずなのに、気持ち良くない。
三、四ヶ月?後、そのタマネギはお店やら農協へ出荷され、誰かの食卓に上がる。食は生きること。
薬品漬けの食物を栄養にしてきたから、平和より金、気持ちより効率、人より自分、そんな世の中になったのだろうか。‥


顔をしかめずにはいられない、この背徳感はなんだろう。僕は考えすぎたろうか。


考えるな、目の前の作業をこなせ。

‥Don't think feel。

そう思えば思うほど、坂口恭平的「思考都市」がどんどん広がっていく。

考えるな。
こだわるにはこの世界のことを知らなすぎる。


オレはこだわりすぎだとあの子にもあいつにも言われているぞ。

大多数の農業はこうだ。

‥Don't think feel。

こだわりより、目先のお金を優先したのは他でもない自分だ。

‥Don't think feel。

単純作業は集中力、忍耐力、腰。


みんな早い。僕の要領が悪いのか、経験の差か。多分後者。(‥だと信じている)

何を考えながら苗を植えているのか、ひとりに聞いたら、「何だろう。何も(笑)」と返された。

‥Don't think feel。

後半は、サニーレタスとリーフレタスを収穫して配達用梱包。

「何で農業やってるの?」と別のひとりに聞いてみた。
「何でだろう」と言われた。

‥Don't think feel。

ここでは、考えない方がいいのだろうかと、僕は考える。
例えそうだとしても、僕は考えずにはいられないと、いつまでも考えていた。

農業とは何なのか、分からないことはその道のプロに聞くのが手っ取り早い。
が、根源的な問いはここではひどく見当違いに思える。質問をする隙もない。

【かのあ】では、カヌーとは何なのか、いつもいつでも根っこの話をしていたけれどなあ。

この制度、雇い主の農家側にとっての僕らは「低賃金の体力だけはある若い労働力」でそれ以上でも以下でもないのか?そりゃそうか?
お金以外を期待しているこっちが調子良い?



外に行くと、内がよく分かる。

僕は昔からずっと自分のことをいつもいつでもすごいと思ってきたけれど、
本当にすごいのは僕自身ではなく、
普通ではないこの僕を受け入れて、活かして、自由に遊ばせてくれるまわりの人こそが、いちばんすごいということに気が付いた。
今日いちばんの収穫じゃないか。

僕と関わるみなさまの懐の深さったら、尋常ではないです。

自身を定規にする(ならざるを得ない?)要素を備える人間の唯一?最大の特権は、人の見極めが単純明快であること。どんな対応をするかで、その人が本物かどうかが分かる。定規には目があるんだ。盛った目、即ち「目盛り」が、ね。
‥決まった。


空き時間には、農家の代表からの値踏みジャブが続いている。
誰も彼も掌握したいのかな?
彼の目に映る僕は、異世界の宇宙人さながら、かもしれない。

なんというか、「わかっていることは、わからないということだけ。」だ。